道徳科の授業について①

公開日：2019年10月24日カテゴリー：ブログ, 心のお話

　皆さん　こんばんは！　不妊相談ひとすじ２０年　宮崎市の漢方相談薬局・漢方の麗明堂、一般社団法人認定の子宝カウンセラー　薬剤師の金丸です。

　皆さんは、道徳の教科が平成２９年から小中学校において、主要科目に次ぐ特別な教科に位置付けられていたことをご存知でしょうか？

近年、地域や学校、家庭において、人と人の繋がりが希薄になっている中、また人間関係が円滑にいかず登校拒否や不登校、そしていじめ問題が増え続けている現状を何とか打開するために、ここ数年間改めて道徳の教科が見直されてきました。

　そこで、今回は武蔵野大学教授の貝塚茂樹さんの『道徳の授業について』についてご紹介させていただきます。

今日は第１回目です。どうぞ、最後までお読みくださいませ.

貝塚茂樹さん　武蔵野大学教授

昭和３８年茨城県生まれ。筑波大学大学院博士課程教育学研究科単位取得退学。博士（教育学）。専門は日本教育史、道徳教育論。国立教育政策研究所主任研究官などを経て、現在、武蔵野大学教育学部教授。放送大学客員教授。麗澤大学大学院学校教育研究科道徳教育研究科道徳教育専攻講師（非常勤）。日本道徳教育学会副会長・事務局長。著書に『戦後教育改革と道徳教育問題』『教えることのすすめ』『道徳の教科化』『天野貞祐』『特別の教科　道徳Q＆A』『「考え、議論する道徳」の指導法と評価』『「考え、議論する道徳」を実現する！主体的対話的で深い学びの視点から』など多数。『戦後日本と道徳教育ー教科化・教育勅語・愛国心』が近日刊行予定。

【授業力向上をめざして】

教育に関するユネスコ報告書の定義

本日は、「道徳科の授業について—　授業力向上をめざして」と題してお話ししたいと思います。この中でも、とりわけ、今後も大きな議論になってくるであろう、評価の在り方をご一緒に考えていきたいと思います。

平成２９年３月に学習指導要領が改訂されました。新学習指導要領は、１９９７年にユネスコの報告書『学習―秘められた宝』で示された学習観が一つの基盤になっていると考えられます。この報告書には教育の定義について次のように書かれています。

　教育とは単に、過去に作り上げられた共通の価値を個々人に受容させることにとどまるのではなく、「なぜ、何のために共に生きるのか」という問いに答え、一人ひとりに人生を通じて、社会の営みに積極的に参加する術を教えなければならない。

これを踏まえて、新しい学習指導要領の中でも、これからの社会に対して、自分はどのように考え、どのように向き合えばよいのかという観点が重視され、そのための資質、能力をいかに育成するかに重点が置かれています。

社会が直面している道徳的課題

私は道徳教育を考える際には、教室の中だけに道徳の問題を押し込めて議論をすべきではないと考えています。道徳に関わる問題は、今や世界的な課題となっています。今はAIの時代だといわれています。自動車の自動運転技術もかなり進展し、すでに９９％は達成しており、もういつでも道路を走れる段階にまで来ているそうですが、残るはあと１％。しかし、この１％がなかなかクリアできない。それは何かというと、モラル・道徳の問題であるのだそうです。例えば、運転をしていて、正面衝突をする可能性が出てくると、とっさにどちらかにハンドルを切らなければいけない。左側に切ると一人の人が立っている。右側には二人の人が立っているとします。そうしたときに、自動運転の車はどっちにハンドルを切るのかということの解決がつかないそうです。

これは１人対２人ですので、１人のほうにハンドルを切って、その１人を犠牲にするという選択が正解のように思えますが、例えば、1人の方が子供で、他方の2人が老人だった場合はどうなるでしょうか。AIはどう判断して、どちらにハンドルを切るのが正しいでしょうか。さらに、もっと根本的な問題としては、そもそも事故が起こった場合、AIが罰を受けるのでしょうか。また、AIが判断して操作したものに対して、運転手が自分の意志とは関係なく刑罰を受けるのかという問題です。こうした大きな課題が解決できていないのです。いうまでもなく、これは道徳の問題です。

これからも科学技術がどんどん進歩していくはずですが、最終的には、道徳的な課題に戻ってくるのではないかと思います。したがって、さらに複雑になる社会の中で、将来を生きる子供たちが困難な道徳的課題に対して、主体的に判断ができ、適切な行動をするための力を育成することが、道徳教育がめざす使命と役割ではないかと思います。

≪次回へつづく≫

公益財団法人　モラロジー研究所　所報　10月号より

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