特集胎児に心はあるのか？②「サルは『サルまね』しない」

公開日：2018年07月04日カテゴリー：人のからだについて

　皆さん　こんばんは！　不妊相談ひとすじ２０年　宮崎市の漢方相談薬局・くすりの麗明堂、一般社団法人認定の子宝カウンセラー　薬剤師の金丸です。

今日は台風一過、昨日とは打って変わって“猛暑”の一日でした。

皆さん、体調はいかがでしょうか？湿度が高くて、気候が不安定ですので体調を崩す方が増えています。どうぞご自愛くださいませ。

さて、今日は、昨日に続いて明和政子さんの「胎児に心はあるのか？」の第二話をご紹介させていただきます。

生命尊重ニュースVol.35　4月号より

京都大学大学院教育学研究科教授　明和政子(みょうわ　まさこ）さん

富山県生まれ。京都大学教育学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士（教育学）。京都大学霊長類研究所研究員、滋賀県立大学人間文化学部専任講師などを経て、現在は京都大学大学院教育学研究科教授。専門は「比較認知発達科学」。主な著書に『霊長類から人類を読み解くなぜ「まね」をするのか』（河出書房新社）、『心が芽ばえるときコミュニケーションの誕生と進化』（NTT出版）、『まねが育むヒトの心』（岩波書店）など多数。

サルは「サルまね」しない

ヒト特有の心のはたらきの特徴の一つは、「サルまね」する能力を持つ、ということです。

１９７７年、ﾒﾙﾂォﾌとﾑｰｱは、生まれたばかりのヒトの赤ちゃんが相手の表情をまねする、という驚くべき論文を発表しました。

大人が目の前で舌を出し入れしてみせると、新生児もゆっくりと舌を出し、口を開閉してみせると、やはり口を開ける。

新生児はまだ鏡を見たことがないでしょう。

自分の舌や唇が身体のどこについているかもわからないはずなのに、まねできてしまう能力（新生児模倣）に、世界中の多くの研究者が衝撃を受けました。

　しかしその後、私たちは、チンパンジーも新生児模倣を行うことを発見しました。

面白いことに、新生児模倣は、ヒトもチンパンジーも生後２ヵ月ごろに一旦影を潜めるのです。その後、ヒトの場合は１才頃からまた誰かの模倣をする時期がやってきますが、チンパンジーにはそれがありません。サルはまねをしません。チンパンジーですら、まねはとても苦手です。サルまねできるのはヒトだけです。「サルまね」という表現は実は誤りだったのです。

　なぜ生後２ヵ月ごろに、ヒトとチンパンジーの新生児模倣が消えてしまうのでしょうか。

その理由はまだわかっていませんが、面白い見方として、新生児期の脳は未だ未分化な状態で、大人の脳のように機能局在化していない、というものがあります。

機能局在とは、視覚情報は後頭葉、聴覚情報は側頭葉、体の動きに関する情報は頭頂葉、考え思考する、イメージするのは前頭葉というふうに、処理する情報によって活動する脳部位に違いがみられることを指します。

新生児の脳はまだ機能局在化が進んでいないので、視覚情報と運動情報の処理が同じ脳部位で行われるから模倣反応がみられるのだと考える研究者もいます。

　では、新生児の大脳はどの程度発達しているのでしょうか。

私たちは、新生児の脳活動を計測することに挑戦しました。用いた機材は、近赤外線分光法(NIRS）と呼ばれるものです。

日本では、ｆＭＲＩのように騒音や身体拘束を伴うｲﾒｰｼﾞﾝｸﾞ手法を赤ちゃんに適用することはなかなかできません。しかしＮＩＲＳはｆＭＲＩとほぼ同じ原理で脳の活動を調べるものであり、かつベッドサイドで簡便に計測できます。

私たちは（株）島津製作所と共同で全頭型の新生児用ＮＩＲＳプローブを新たに開発し、これを新生児の頭部にすっぽりと被せ、視覚情報ｙ聴覚情報などを提示した時に脳のどの部分が活動するかを調べました。その結果、ヒトの赤ちゃんの脳は、視覚野と聴覚野については新生児の段階で既にある程度の機能局在化が進んでいること、他方、触覚刺激については、新生児の脳の非常に広い部分を賦活させることが分かりました。

≪つづく≫

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