2009年11月のコラム
落語の枕噺に“葛根湯医者”というのがあります。
町の衆がやって来て「先生、今朝ほどから頭が痛てーんですが…」と訴えると、
医者:『頭痛だな。葛根湯をおあがり』
「先生、おら腹が痛いんだけど」
『腹痛だな、それなら葛根湯をおあがり』
「先生、あたしは目が 痛くて…」
『ああ、それなら葛根湯をおあがり。はい、次の方?』
「いや、私は付き添いで来ただけで…」
『まあいいから、お前さんも葛根湯をおあがり』という訳で、
このお医者さんはどんな症状の患者さんにも葛根湯を処方したことから“葛根湯医者”と藪医者呼ばわりされるようになるのですが、漢方というのは実に面白く、病状と体質をきちんと掴んでさえいれば一つの漢方薬でもいろいろと違った病に応用する事が出来るし【異病同治】、例え風邪であっても20~30種類もの漢方薬を時期や体質によって使い分けることもある【同病異治】のです。
さて、近ごろは新聞のチラシに病人さんの体質に関係なく『かぜに麻黄湯!』を勧める広告が目立ち、この落語が笑えない現実に憂いている漢方薬剤師はきっと私だけではないと思います。
麻黄湯の中のマオウという生薬は風邪でいう解熱鎮痛の働きもありますが、交感神経を興奮させるエフェドリンという成分が特に多く入っているために、①心臓の弱い人②血圧の高い人③内臓機能の弱い人④体力のない人には絶対に使えないのが私たち薬剤師の常識です。
漢方はその人の病状と体質を見極めてから使うのが基本ですから不安な時や分からない時は、迷わずお尋ねくださいね。
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