父親の存在の本当の意味
亭主関白という言葉が、若いご夫婦の間では死語になりつつある昨今、“父親の存在の本当の意味”を皆さんに知っていただきたく、また家庭の中で時代と共に影が薄くなりつつあるお父さん達を応援したく、今回はそんな時に店頭で読むお話しを紹介したいと思います。
家族にはいろいろな風景がある。
そして、そのそれぞれの風景は、家族ひとりひとりの“こころの風景”でもある。
会社勤めの18年間、私はずっと人事部に所属していた。人事部は一見、華やかそうに見えるが、実は最も辛い職場なのである。社員のサラリーマンとしての悲しさを見るのが、人事部の仕事みたいなものである。会社勤務の頃、5年に一度行われる会社の大運動会の会場で、私はある家族の風景を見てとても感動した。その大運動会は、会社が大きな遊園地を一日貸し切って家族ぐるみで行われる大規模なものであった。
その遊園地の大観覧車の下で、ある社員の家族が楽しそうに弁当を広げていたのである。
両親と小学生の女の子と、幼稚園の女の子の一家4人が、楽しそうに話しながら弁当を食べていた。実は、この父親は会社では能力的にあまり評価されていない人だったのである。毎年配置転換の対象となり、人事部の私は職場の上司に頼まれてその人の受け入れ先を探し回ったが、なかなか受け入れてくれる職場が見つからないのであった。その父親を囲んで、一家4人が楽しそうに弁当を食べていた。
父親はそんな子供達を見ながら、満足そうにうなずいていた。父親が会社でどんな評価を受けていようと、そんなことはこの女の子達にとっては全く関係ないのである。そして、この子供達にとってはかけがえのない父親なのである。
私は思わず目頭が熱くなった。
その時、小学生の女の子が言った。
「お父さん、今日は楽しいね。いい会社に入ってよかったね」
すると、母親が言ったのである。
「そうよ。お父さんのおかげよ」
私はまた、目頭を押さえていた。そして、その場をそっと離れたのであった。
~「こころの風景 荒木忠夫著」~
私はこのお話を読むたびにいつも胸にグッとくるものがあって涙が滲んでくるのですが、「お父さんのおかげよ」という奥様の一言で、お父さんは今までの苦労や努力が全て報われ、溜まった疲れがおそらくふっ飛んでいくのだと思います。
奈良の春日大社の宮司である葉室頼昭氏(医学博士)は、その著書の中で「母と子という相互関係は人をはじめ他の動物にもあるが、父と子の関係があるのは人のみである。なぜ人間だけに父親の存在が必要だったのかというと、天は人の子のみに敬う心という他の動物にはない心を芽生えさせたかったのだ。」と述べておられます。
この敬う心こそが、子供が学校や社会に出て円滑な人間関係(特に上下関係)を築き上げるためにとても必要になってくるのだそうです。
しかし、この心は父親から直接子供には伝わらず、その子の母親を通してでなければ伝えるのは難しいと書いてあります。私も家内にいつも「お父さん素晴らしいね!」と子供に言ってもらえているかというとあまり自信がありませんが、≪妻に心から尊敬される夫≫ ≪夫の美点を我が子に伝える妻≫の関係になれるよう夫婦で努力して、父親の存在の本当の意味をしっかりと学んで、子供達に敬う心をきちんと伝えていければと思っています。
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