特集①胎児は学習している～脳の発達と感受性期

公開日：2019年01月17日カテゴリー：これからの人生に役立つ話, 人のからだについて

　皆さん　こんばんは！　不妊相談ひとすじ２０年　宮崎市の漢方相談薬局・くすりの麗明堂、一般社団法人認定の子宝カウンセラー　薬剤師の金丸です。

　今日は、２４年前に阪神大震災が起きた日です。

　今日も朝から寒い一日でしたが、２４年前は小雪もちらついていてもっと寒い日だったように思います。震災に会われた方は、本当に怖くて、辛くて、大変だったことと思います。

　２４年経って、街は復興しても、まだ傷跡は心の傷は癒えないことでしょう。それでも、前を向いて歩んでこられてきた方々に、本当に頭が下がります。

　今朝のNHKニュースでは、３０代の青年が、２４年前の地震のことを忘れないために活動されていることが紹介されていました。自分のことだけではなく、地域や社会のことに一生懸命に取り組んでいる青年の生き生きとした眼差しを見ながら、日本の未来が楽しみになりました。

　今日から、生物学者であり心理学者の明和政子さんのお話をご紹介したいと思います。

生命尊重ニュースVol.35 2018年12月号より

京都大学大学院教育学研究科教授

明和政子(みょうわ　まさこ）さん

富山県生まれ。京都大学教育学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士（教育学）。京都大学霊長類研究所研究員、滋賀県立大学人間文化学部専任講師などを経て、現在は京都大学大学院教育学研究科教授。専門は「比較認知発達科学」。主な著書に『霊長類から人類を読み解くなぜ「まね」をするのか』（河出書房新社）、『心が芽ばえるときコミュニケーションの誕生と進化』（NTT出版）、『まねが育むヒトの心』（岩波書店）など多数。

私は生物学者であり心理学者という立場から、ヒト（Homo sapiens)という存在の科学的理解を目指しています。なかでも、①ヒトの心の特有の働きとは何か。②それはどのように進化してきたのか。③それはいつ、どのように獲得されるのか、という三つの点から「ヒトとは何か」を明らかにしたいと考えています。

　進化の視点からは、ヒトともっとも近縁な動物種であるチンパンジー（Pan troglodytes)の行動や心の働きをヒトのそれと比較する実証研究を行っています。また、ヒトの個体発生については、胎児期からの行動特性や、脳と心の働きを調べることにより、ヒトらしさがいつ、どのように生まれてくるのかを解明しようとしています。京都大学の私の研究室（赤ちゃんラボ）では、いまだ言葉で自分の内面を表現できないヒトの赤ちゃんがどの程度の心の働きを獲得しているかを、先端技術を用いて調べています。赤ちゃんの脳の活動を計測したり、見ている世界を可視化して理解する試みです。同時に、親子のインタラクションの流れを可視化し、客観的に評価する研究なども行っています。

脳の発達と「感受性期」

ヒトの行動や心の働きを考えるうえで重要なことは、発達は「デコボコしながら進む」という事実です。ヒトを始めとする動物の発達は、線形的、つまり、つねに右肩上がりに進むものではありません。この現象の背後にある神経系メカニズムの一つは、脳の「感受性期」の存在です。脳は、神経細胞とそれらを間接的につなぐ電気配線（シナプス）でできています。脳は電気の走り具合によって活動するので、神経細胞だけではなく、それらをつなぐシナプス・ネットワークが必要なのです。ヒトの脳の細胞数が一番多いのは、胎児期から生後数カ月にかけてです。その後、脳内のネットワークが形成されていくのですが、ここに感受性期という特別の時期が関与してきます。

　感受性期には、産まれた環境でよく使われる情報処理ネットワークだけが残り、あまり使われないネットワークは死滅・消失していきます。つまり、生まれ落ちた環境に適応した、効率のよい脳の働きを可能にするネットワークが作られていくのです。こうした現象は、「刈り込み」と呼ばれています。ネットワークの刈り込みは、ある特定の時期に顕著に起こります。環境の影響をとりわけ強く受けて脳構造が変化する時期、これが感受性期です。視覚野・聴覚野といった第一次感覚野の刈り込みは、生後5,6か月から始まり、2,3歳に完成します。他方、複雑かつ高度な情報を処理する前頭前野の刈り込みは25歳ごろまで続くことが分かっています。

　例をあげましょう。英語圏で育つ子供は、英語のRとLを難なく区別して発音できますが、日本で育つ赤ちゃんは日頃RとLの発音を区別する環境に置かれないため、音声を処理するネットワークの刈り込みが、英語圏の子どもと違う形で進みます。また、特殊な事例ではありますが、福井大学の友井明美教授らによる研究ー虐待されて育った方の脳の構造を調べた研究によると生後どのくらいの時期から虐待を受けたかにより、脳構造にダメージを受ける部位が異なるといいます。生後初期にもたらされた刈り込みの異質性は、成人になってからも影響を受け続けるのです。

≪つづきはまた明日≫

〈生命尊重ニュース〉http://www.seimeisontyou.org/

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